鳥がさえずる新緑の伊豆路を真っ白なBMWで駆って行く。
長距離ドライブを通して感じた5シリーズの懐の深さとは?
ルートをなぞっていこう。
久しぶりのドライブだ。あえて東名を使わずに海側から行くコースを選んだ。
都会の喧騒を抜けて東海道から新湘南バイパスを経由して西湘バイパスに入っていく。途中一般道を介しながら行くこの有料バイパスは片側二車線を有しており、複雑なカーブなどもなく単調な道路だ。左手に相模湾を望みながら伊豆半島を目指す。トイレ休憩のため一旦早川インターチェンジで降り、改めてアネスト岩田ターンパイク箱根の入口に向かった。
ETCXにてスマートにゲートを抜けたならば、緩やかな上りの坂道が迎えてくれる。この日はあいにくの曇り空。濡れた路面に散った桜の花びらが貼り付いている。コーナーの休憩所にはクルマの取材らしき一行が何やら撮影の準備をしており、ネオクラの域に入ってきたE60に温かい視線を送ってくれた。
大観山展望台から湯河原峠料金所を経て伊豆スカイラインに乗るまでは終始霧が立ち込め、視程は30mほどであった。前後のフォグライトを点灯させ、霧を切り裂くイーグルアイは痺れるほどカッコイイんだろうなと妄想しながら、クルマのノイズに耳を傾ける。時速60キロで約2200rpm。トルクフルなオイシイ領域が続いていく。
BMWは直線番長ではないが、アウトバーン仕込みのスカッとした乗り味を堪能するなら西湘バイパスのような道路を走るに限るだろう。ターンパイクに入ってからは野太いサウンドを響かせながらグングン駆け上がって行くが、タイトなコーナーでは鼻面の重さが仇となってどうしてもモタついてしまう。同乗者への乗り心地を考えるとこの巨体を振り回せるわけもなく、ガードレールからはみ出した枝にヒットしないよう気をつけながら十国峠を目指すのであった。滝知山展望台では富士山を拝めるはずだったが願い虚しくわずかに三島市街を望む程度。この先の玄岳駐車場も同様でインターチェンジを降りて伊豆スカイラインを後にした。
昼食は蕎麦処へ。
修善寺市街の奥座敷的な位置にあり、テラス席からの眺望は絶景であった。季節の地野菜が先付けで出てきて、細挽きの蕎麦も美味しかった。ひっきりなしにお客さんが入ってきて食事も中盤になる頃には満席状態。県外ナンバーも多数来ており、お店の人気がうかがえた。
修善寺の温泉郷に入っていくと、道幅がぐっと狭くなりザラメ路面を進んでいくことになる。伊豆最古の温泉とあって飾り気の無い静かな趣きを感じ、赤い欄干や独鈷の湯を横目に本日のお宿、瑞の里〇久旅館を目指す。今日は早々にE60を停めて温泉街をぶらついてみたくなった。チェックイン後サッと汗を流し、腹ごなしに有名どころを散歩してみる。夜になったらライトアップされた竹林の小径も行ってみよう。
ここまでの移動距離は150キロ前後。
余裕のある排気量とゆったりとした車内のお陰で疲労はほとんど感じられない。伊豆半島の一般道は走りやすい道も沢山あるが、一本入ると狭くて急な坂道が多い。E60のようなグラマラスボディにはかなり気を使う部分もあるが、それをパワーで補っていくアメ車的要素が530iにはある。そういった意味ではE60は最高のグランドツアラーと言えよう。ワインディングでの取り回しはもう少しコンパクトなクルマの方が一体感を感じられるだろうが、それでも走りのBMWだ。同セグメントのクルマに比べれば十分にスポーツをしている。
「お疲れさん。」とそっと声をかけ、ロックボタンを押した。