どんな輸入車であれ、普段の生活の中に異文化を取り入れることは「余裕」なんだと思う。懐事情のことではなく、ゆとりや人生の幅があるといった方がしっくりくるかもしれない。
人生を楽しむ人のそばにはいつも輸入車がいる。
そしてオーナーの心情はBMWが自分の日常にある、ただそれだけで満足なのだ。
余裕を愉しむ
「余裕」とはなんだろうか。
前時代的な表現ではあるが、マイホームに大型犬、駐車場にはツーリングワゴンという画が、豊かさの象徴として扱われることがある。その真意のほどは定かでないが、私の解釈としては あえて ということなんだろう。
賃貸でもいいがあえて持ち家というライフを選ぶ、小型犬じゃなくあえて大型犬にする、タイヤが4つついて走ればいいじゃあないか、という所をあえて豊穣なワゴンをチョイスする。必要最低限で済むかもしれないが意図的にソッチを選択するそのことこそが余裕と見なされるんだと思う。例えば国内の上級サルーンを選べる価格帯で3シリーズが射程圏内になるが、普通なら前者を選ぶところを車格を下げてでも愉しみたいと思う人は3を選ぶ。同じ道をただ走るでも歓んで駆け抜けたいと思える人なのだから、間違いなく余裕があるのだ。
心にゆとりがあればどんな状況でも楽しめる。ちょっとやそっとクルマがへそを曲げても動じなくなってくる。面白いことに少し神経質な人だって許せてしまうようになるのだ。そのくらいの余裕があった方が、輸入車とうまく付き合える。
わが国においてドイツ御三家と呼ばれるクルマの知名度は非常に高い。それだけに良くも悪くもイメージが先行しているが、乗ってみればどれも共通して造り込みの良さを感じる。これはかつて西ドイツの工業が熾烈な競争をしていた歴史的背景にある。誰もが知り、誰もが羨む高級車メーカーであるが、かといって雲上メーカーというわけでもなく、あくまで実用域にありながら”乗っている”というだけで「おっ」となる。ちょうどいい立ち位置にあるのがドイツ車なのである。質実剛健で堅牢なモノ造りをする文化性は、日本人のそれにもピッタリと嵌まっていた。中でもBMWはスポーツを売りにしており、スポーツ(ティ)カーに実用性や高級感を足していった感じがBMWである。絶対王者のメルセデス、それに追いつけ追い越せでスポーツで仕掛けるBMW、近年ではグッとアーバンテイストになったがベンツでもビーエムでもない通が選ぶアウディ。そのどれを相棒に迎えても、きっと後悔することはない。ドイツ車は日本人のライフスタイルにしっかり染まってくれる。
アルピンホワイト×サンルーフという選択
賛否あるオプションのサンルーフ。
これもまた無くても困らないものだが、あえてあってもいい。幸いなことに私はサンルーフの故障や雨漏りは経験したことがなく、選べるクルマならば今後も付けたいと思うほどに惚れている。とにかく開放的でたまらない。昔はレザーシートにサンルーフ、カーナビゲーションが高級車と名乗る三種の神器だったそうだが、近年では需要が減り一部のクルマでしか選択できない。よくクルマの重心が上がると言うが、サーキットで走りこむ等といったことが無いのであれば、日常使いの範疇で重心が上がることによる影響はまず感じられない。パーツが増えることによる故障のリスクも無視はできないが、あることによる非日常を楽しみたい。車内は明るくなり、四季を感じられ、夏場の車内換気にも大いに役立つ。一説には欧米人の日光に当たらないことによる健康リスクから装着が始まったという話もあり、そんな歴史に思いを馳せながら風を感じてみてはいかがだろう。昔に比べて信頼性も上がっているので、装着を考えてみるのも一考だ。
さて初期のE系車体には、シルバーや濃紺の色がよくマッチしていた。E46くらいまでのイメージはモナコブルーで、マットでほのかに渋さが残るカラーが、90年代のBMWにはお似合いであった。クリスバングル就任後は、時代の先端を行くように劇的にテイストが変わり、カラーもホワイトやブラックが人気色となった。BMWのカラーにはよく世界の有名サーキット場がある地名が付与されるが、ホワイトには「アルピン」という枕詞がつく。これはアルプスの雪山をイメージした白という意味で、青すぎず黄色すぎない絶妙な白さをまとっているのが特徴だ。マイナーチェンジはありつつもまさにBMWを代表するカラーである。
1台目のE90購入時は濃紺が候補に挙がっていた。ただ筋肉質のE46にはよくマッチしていてもいくらかぼってりとふくよかになったE90には野暮ったく見えたのが第一印象だった。だが実車のアルピンホワイトを見たらその清楚で上品な佇まいにやられてしまう。洗車が大変という心配もあったが、思っていたより白の維持は大変ではない。比較的コンパクトな3シリーズに白という組み合わせは見た目のバランスもよく、3面フィルムの装着もリアが引き締まって良かった。2台目となったE60も同じように踏襲し、いかつさの少ない白鷲はなかなかのイケメンだ。やはり「ビーエムの白」はテッパンだと改めて思った次第だ。何色にしようかカラーで迷っている時間が何より楽しい。爽やかで誰が乗ってもお似合いのアルピンホワイト、ぜひチョイスしてみてほしい。
見る風景がガラッと変わる
最初にBMWで走った時の感動は今も忘れはしない。同じ道なのに、同じ風景なのにとにかく鮮烈だったのを覚えている。ワイパーとウインカーを間違えるな、走りはどっしりと安定していて踏めばどこまでも真っ直ぐ路面を蹴る。交差点で曲がってみればオンザレールで思い通りにノーズが向く。
スーパーに行ってみよう。
駐車場に気をつける。乗り降りもスマートに心掛ける。サンダルはご法度にしておこう。
デートに行ってみよう。
パートナーは口角が上がる。ジェントルな運転を心がければポイントは高い。ホテルの正面玄関に乗り付けたって恥ずかしくない。デートスポットにBMW、どこから見ても絵になるはずだ。
旅行でロングドライブをしてみよう。
乗り心地で文句が出ることはまずないだろう。長時間運転をしても疲れが少ない。名所でクルマの写真を撮ってみる。白色のBMWは主役級だ。ホームに帰ってくればますます愛着が増しているはずである。
送迎に使ってみよう。
セダンであれば伝統的なスリーボックススタイルで、リアに乗る人も悪い気はしない。雑音の少なさは流行りのSUVよりも上を行く。
運転マナーも上がる。
BMWを運転するにふさわしい所作が身についてくる。クルマは道が育てるが、ドライバーはクルマが育てるんだと思う。悪目立ちはしないが存在感があるのがBMW。ステアリング中央のロゴマークを眺めながらステアリングを握る。「あぁ、自分は今BMWに乗っている」。この瞬間こそが、オーナーにとっての至福の時なのだ。