tokainorookie’s blog

やさしい輸入中古車を買って人生に彩りを🇮🇹

BMW E60ラストラン

マセラティと入れ替えることにしたBMW

3年4か月、68,038キロを共にしたE60 530iの最終話。

車との別れ=家族との別れ

12か月点検を終えオイル交換をしたばかりだというのに。

本音を言えばそんな気持ちもありはしたが、私の気持ちは清々しかった。次のクルマでウキウキしていたのではない。しっかり向き合って出した答えだけに満足していたのである。前向きな愛車との別れ、こんな気持ちは初めてである。

クルマを乗り換える時、それはいつも突発的だった。

散々乗り回した国産車はミッションがすべって急遽乗り換えになったし、人生初の輸入車は想像のできない自然災害によって降りることを余儀なくされた。その日はいつも突然やってくる。これらで困ることは心理的にも金銭的にも次への準備ができていないということだ。直後は乗りたいクルマもなければ蓄えもない。入籍直前で急に彼女に振られたようなものとでも言おうか。

愛車はリセールなんか考えず乗り潰す。これが我が家の暗黙のルールだった。そもそも計画的に乗り換えなんぞしてこなかった自分にとって、乗り換えのタイミングはすべて他責だったのである。

ところが今回ばかりは違った。ある程度のスケジューリングの中で片隅に乗り換えることを考えていた。結果的にはだいぶ早くなってしまったが。

自分で決めたことであれば納得もできる。とはいえ愛車は家族と同じだ。最後にエンジンを切るその時までしっかり大切に乗る。扱いを間違えない。そんな風に思いながらシルキーシックスの乗り味を五感で感じるカウントダウンが始まった。

 

別れの儀式

その日は雨だった。詩人を気取るなら涙雨と言ってもいいかもしれない。

停滞前線の影響で朝からかなりの本降りだった。

私にはお世話になったクルマに対するマイルールがある。それは各タイヤにお清めのお酒をかけてあげることだ。昔父が廃車にするブルーバードのタイヤに日本酒をちょろっとかけており、320iが来たときにはドイツ車だからとビールだった。これからよろしく、事故なく走ってくれてありがとう。そんな意味で労うのだ。E60にはレーベンブロイを用意した。

さあエンジンをかけ最後のドライブだ。いつも通りの心持ちでステアリングを握る。運転を変わってもらい座り慣れなかった助手席にも乗る。適度に劣化も目立ってきてはいたが、E60の530iはやっぱり全方向で優秀なコであった。

前日に洗車をしたのでボディは雨を弾いていた。約2時間をかけて到着した店舗の駐車場。バングルバットが特徴的なE60のリアをそっと撫でて駐車場を後にする。今までの車歴の中で3年という月日は1番短かったが、このクルマは私を更なる高みへと連れて行ってくれた。あの時憧れていなかったらE60に乗ってはいなかっただろう。直列6気筒を経験しなければV型8気筒に行くこともなかっただろう。12年に渡るBMWとの暮らしは間違いなく私の人生に大きな影響を与えた。このブログを開設するキッカケにもなり感謝である。

 

E系BMWの魅力

2012年。一気にクルマの現代化が進んだ年と記憶している。ナビはタブレットを模したオンダッシュに切り替わり様々な電子介入があり、ダウンサイジングターボの時代が幕を開けた。この頃のデザインアイコンも今に続く流れである。いわく、それまでの時代を担ってきたE系は最後のクルマらしさが味わえる世代と言えよう。強靭なボディにガチッとしたハンドリング。随所にメカ感を感じながら、当時のメーカーの意気込みを強烈に反映させた結晶。BMWに限らず2000年代の欧州車は魅力的なモデルが数々ある。ヒトと近いクルマでありながら、比較的手の届きやすい価格帯であるのが魅力と感じる。近い将来、E系BMWも改めて再評価される時代が来ると期待している。