tokainorookie’s blog

やさしい輸入中古車を買って人生に彩りを🇮🇹

イタリア モデナへの道(後編)

中期のエグゼクティブGTは関東圏にはなく、中部地方や関西地方に数台の在庫車があるだけだった。ただでさえ数が少ない車種である。ひとまずグレードと年式は無視をして実車の確認に行ける範囲でお店を探してみた。

初めて見たクアトロポルテ

スーパーカーがズラリと並んだそのお店には、ネロカーボニオのクアトロポルテが鎮座されていた。しばし在庫車として休んでいたであろう佇まいであったが、それでも独特のオーラが漂っていた。斜め後ろから見たボディの盛り上がりと、内装のあつらえはもはや芸術品であり、思わず「美しい…」と声が漏れた。それを美しいと思える感性を私はきちんと持ち合わせていたようだ。ガンガン足に使うというよりは、このコンディションをできるだけ保っていきたいと思えるような、骨董品のような趣向のクルマ。これが実車を見た感想だった。

早速お店の主人に尋ねてみる。故障はどうか、ウィークポイントはあるか、各所の劣化具合など、イタリア車の入門として自分が太刀打ちできるのかどうか都度頭で整理していく。もちろんターゲットにしていたエグゼクティブGTのことにも触れた。

「お安くしますよ。」主人はそう言葉をプレゼントしてくれたが、私はその当該車を買うつもりで見に来たわけではなかったのであえて金額は聞かずお店を後にした。

 

2008年式のスポーツGT S。見せてもらったクルマである。

スポーツGTグレードをベースにシングルレートダンパーを採用し車高を若干落としたトップグレードだという。各所がブラックアウトされた塗装も記憶にあるクアトロポルテと様相が違っていた。後期モデルでのスポーツGT Sはよく知っているが、パイロット版として中期にも存在していたのは知らなかった。カーオークションでも年間2台くらいの流通量、まさに幻の大穴グレードである。

最高級のラクシュリーか最高峰のスポーツか。

そのブランドの「売り」は何だろうか。Wikipediaによればマセラティ高級スポーツカーブランドー。であるという。

であるならば変な悪あがきはせず、素直に調理されたメインディッシュを味わった方が良いのではないか。そう言えば実車を見る前に、海外のYoutubeでスポーツGT S(後期)のボルドーにシルバーカーボンの内装が妙にクールだなと思っていたことを白状する。現車を見て、私の頭の中は完全にラクシュリーからスポーツに振ってしまった。

 

夢を前倒しにすることの意義

それからはスポーツグレードに絞って改めて情報収集をする。至れり尽くせりのエグゼクティブGTをあんなに欲しがっていたのに、手のひら返しもいいとこだ。その後も他所にて実車を見に足を運んだが、結局初見のお店で買うことにした。

初めて見に行った日からちょうど1か月、4回目の来店で契約となった。

 

マセラティは私にとってアガリのクルマだ。

家からほど近い幹線道路沿いにディーラーがあり、よくディーラーマンがクルマを動かしているのを10代の時から見ていたのだ。「40、50代になったらクアトロポルテに乗ろう」。垣根越しにグリジオのクアトロポルテを目で追いながらそう思ったのだ。なぜ40、50代になってからと思ったのか。マセラティが似合う年頃になったらとわかっていたのである。今は36歳、ただの会社員である。到底、分不相応なのはわかっている。ただ愛読したブロガーさんのお言葉を借りれば、

マセラティが似合う人間になればいいー。

本当にその通りだ。そしてあと4、5年経ったとして状態の良い個体があるとも限らない。その頃自分に所有したいと思える熱量が残っている保証もない。お金、家族、健康などそういう状態になったら買う、という環境ではなく、今叶えられるのであれば有限の時間を前借りして実現させてみよう、と。そして努力をして後からそれに見合う男になればいいのだと。

 

ビマーからマセラティスタ

こうして私はマセラティ クアトロポルテを迎え入れることとなった。ほんの少しの勇気と度胸と多大なる家族の協力を得て。迷いはなかった。この先、経験したことのないトラブルに神経がすり減るかもしれない。でもいいのだ。このアガリのクルマをひたすら愛でれば。

3シリーズから憧れのE60へ。そのデザイナー繋がりでマセラティ クアトロポルテへ。こじつけでも、私はこのモデナ生まれのクアトロポルテに乗る運命だったのだ…!